未完であることは萌えである〜現代美術館でのフラグメント展を見て〜

2014年3月2日(日)に東京都現代美術館へ行って来ました。

 
 
 
率直な感想として、
身近にあるものがこうも非日常的なものに
変容するのかと驚きの連続だった。
 
下記に6名の作品と感じたことを記載します。
 
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・髙田 安規子・政子さんは身近な安価な品物を
加工・装飾することでそれ自体が持つ価値以上の価値を与え、
日用品からアートへと昇華させる。
その美しさによって観る者の心は奪われる。
これがあの「軽石」「トランプ」「苔」「地図の等高線」なのか!?
 
・宮永 亮さんは今回の映像作品は主題である「wavy 波」を表現するため、
複数の映像をレイヤー状に組み合わせていた。
私が観て思ったのは、1つ1つの映像レイヤー自体には大した意味は無い。
それらを組み合わすること無意味が意味を持ってくる。
それはまるで、水滴を見てもそれがただ1粒の水滴であるだけように、
それが複数集まることで水たまりができ、波立つようになる。
 
・青田真也さんは生活によくある洗剤の入れ物を使った
プラスチック製品やガラス製品をヤスリがけした作品だ。
我々は普段プラスチックが安っぽいつややかさを持っていることを知っている。
その作品は同じ素材であるにも関わらず全く別物に見える。
表面の見た目が非常にマットで、このために何かで別な素材でわざわざ
新しくその形状を再現したかのようだ。
 
・福田 尚代さんの作品も上記のようにごくありきたりな物を加工していた。
消しゴムの外縁を残してすべて取り除いたり、方眼紙の枠を残して切り取る、
大量のしおりをほどく等。
パッと見は何で出来ているかわからない。
題名を読むことで、確かにそれがその主題に含まれていると思い出し納得する。
 
・吉田 夏奈さんの作品は公式HPの説明にあるように、
体で感じた大自然を絵にしていた。
観る人はそこに行ったことが無いのにも関わらず、
クレヨンを使った作品、平面の森林、四角錐に描いた山、
直方体の柱に描いた地層の断層等を観ることで、
「あ、こんなカンジだったのか」と疑似体験した。
 
パラモデルさんの作品もパッと見ではなにがなんだかわからない。
幾何学的なアートかなと思って近づいてみると、
それが子供向け玩具であるプラレールの線路だったり、
工事や設備で使う配管の部品だったりする。
訪問した時には実演しておらず、作品製作過程のDVD映像が流れていた。
上記の既成品を使って作品を作っては解体し、再び作っては解体していた。
終わりが無い。
年末の道路工事かと思った。
 
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これら上記の作品は作品自体としては完成形であるが、
副題にもあるように、未完であることでより観る者の想像力を掻き立てる。
 
アニメ監督の鶴巻和哉が本に書いた萌えの定義は
「特定のキャラクターに関する不十分な情報を個人的に補う行為」だ。
これを別な言葉で言うと「想像力を掻き立てる」とも言える。
 
未完⇛想像力
萌え⇛想像力
 
論理的に逆はならないが、未完も萌えも似た印象を受ける。
 
私もこのブログを通してフラグメントというフラグを
少しでも立てられればと思います。